こんにちは!
合唱ファンにとっても、全国の合唱部員にとっても、1年で最も熱い季節が今年もやってきましたね。
2026年度に開催される「第93回 NHK全国学校音楽コンクール(Nコン2026)」の聴きどころは?
今年のテーマは、心が激しく揺れ動く瞬間を表現した一言、「どきん」です。
驚き、ときめき、新しい発見、そして葛藤の末の成長――そんな青春の1ページを切り取ったかのような、素晴らしい課題曲が出揃いました。
驚くことに、今年の制作者陣は例年以上に超豪華かつバラエティ豊か!
Eテレでお馴染みのキャラクターから、世界を舞台に活躍するトップピアニスト、そして日本を代表するソウルシンガーまで、これまでにない新しい風が吹いています。
今回は、4月に発表された楽譜や参考演奏をもとに、小学校・中学校・高等学校それぞれの課題曲の「音楽的特徴」や「合唱としての聴きどころ」を、徹底解説します。
これを読めば、夏のコンクール予選が100倍楽しくなること間違いなしです!
今年のテーマ「どきん」に込められたメッセージとは?
解説に入る前に、まず今年のテーマである「どきん」について少し触れておきましょう。
私たちは日々、たくさんの「どきん」に出会っています。
- 初めてのことに挑戦するときの、胸の鼓動
- 誰かの言葉にハッとしたときの、驚き
- 思い通りにいかなくて、悔しさに胸が締め付けられる瞬間
- 仲間と声を合わせ、心が一つになったときのときめき
合唱は、一人ではなりたちませんよね。
仲間と呼吸を合わせ、互いの声を聴き、感情を共有する中で、いくつもの「どきん」が生まれるのでしょう。
今年の3つの課題曲は、この「どきん」という普遍的なテーマを、それぞれの年代(小学生・中学生・高校生)の目線に合わせて、全く異なる音楽ジャンルで表現しています。
それでは、各部門の楽曲を詳しく見ていきましょう!
【小学校の部】ワンワンがNコンに降臨!命の躍動を歌う『どっきん せみさん』
楽曲概要
- 制作: ワンワン(Eテレ『いないいないばあっ!』)
- 作詞: チョー
- 作曲: 三宅悠太
音楽的な特徴:楽しさと芸術性の見事な融合
小学校の部の課題曲を手がけたのは、なんとEテレ『いないいないばあっ!』の「ワンワン」として、子どもたちに笑顔を届けてきたチョーさんです。
Nコン史上初とも言えるキャラクター主導の制作に、発表当時は大きな話題となりました。
作詞を担当したチョーさんが生み出したのは、ユーモアと生命力に満ちあふれた、言葉遊びのような楽しい世界観。
そこに、現代の合唱界を牽引する作曲家・三宅悠太さんが、素晴らしい魔法をかけたのです。
この曲の最大の特徴は、「ただ楽しいだけのアニメソング」で終わらない、合唱曲としての高い芸術性にあります。
子どもたちが無理なく、かつ美しく声を響かせられる音域で設計されており、伴奏と歌が複雑に絡み合いながら、音楽的な深みを感じさせてくれる構成になっています。
ここが聴きどころ!
①「せみさん」の目線から広がる、驚きと発見の世界
歌詞は長い間、土の中にいた「せみさん」が、いよいよ地上へと飛び出す瞬間のドキドキから始まります。
初めて見る青い空、眩しい太陽、そよぐ風。
せみさんにとっては、世界のすべてが「どきん」とする驚きに満ちています。
このせみさんの姿は、日々新しいことを吸収して成長していく子どもたちの姿そのものです。
子どもたちがどれだけ「せみさん」になりきって、心の底からワクワクして歌えるかが最大の注目ポイントです。
② 言葉の響きを楽しむ「オノマトペ(擬音語)」
曲中には、言葉の響きそのものが楽しくなるようなオノマトペ(擬音語)がたくさん散りばめられています。
これらの言葉をただなぞるのではなく、子音をパキッと明瞭に発音し、リズミカルに弾けさせることで、曲全体のドライブ感(違う次元へと連れて行ってくれる感じ)が一気に増します。
体全体でリズムを感じ、弾けるような笑顔で歌う子どもたちの姿は、観ている人聴いている人の心まで「どきん」と躍らせてくれるでしょう。
③ 歌う喜びがダイレクトに伝わるエネルギー
クラシック的な「縦の線を綺麗に揃える」という意識を超えて、「歌うって楽しい!」という純粋なエネルギーがギュッと詰まっています。
コンクールという競争の舞台でありながら、子どもたちの原点にある「音楽を楽しむ心」をどれだけ引き出せるか、指導者の手腕にも注目です。
【中学校の部】世界の反田恭平が初挑戦!葛藤と気品のドラマ『花へ。』
楽曲概要
- 作詞・作曲: 反田恭平(ピアニスト)
- 合唱編曲: 土田豊貴
音楽的な特徴:ポップスからクラシックへの原点回帰
近年の中学校の部といえば、J-POPアーティストによる親しみやすい課題曲がトレンドとなっていました。
しかし今年は一転、ショパン国際ピアノコンクールで世界の頂点に立ったピアニスト・反田恭平さんが作詞・作曲を担当するという、驚きのサプライズが用意されていました。
これにより、今年の曲はクラシックの気品とアカデミックな美しさが光る、非常に格調高い仕上がりになっています。
合唱編曲は、緻密な和声(コード感)設計で定評のある土田豊貴さん。
中学生の瑞々しく、まだ少し不安定な声(変声期を含む)が、最も美しく響くように計算し尽くされた構成になっています。
ここが聴きどころ!
①「答えなきを愛すこと」という深い歌詞の世界観
驚くべきは、反田恭平さんが自らペンを執った歌詞の深さです。
そこには「生きることは答えなきを愛すること」という、思春期ならではの迷いや葛藤、そしてそれを優しく包み込むようなメッセージが込められています。
中学生という時期は、子どもから大人への過渡期であり、まさに「心が一番揺れ動く(どきんとする)」季節です。
綺麗にまとめるだけの歌唱ではなく、内面の「揺らぎ」や「切なさ」を、どれだけ声の変化で表現できるかが、この曲の成否を分けます。
② ドラマティックで技巧的なピアノ伴奏
さすがトップピアニストの作曲というだけあり、伴奏のピアノパートが単なる「歌のサポート」に留まりません。まるで、もう一人の主役として合唱と対等に会話をするように、ドラマティックで華麗に動きます。
ピアノの音色一つで、曲の空気がガラリと変わる瞬間が何度も訪れます。
合唱の歌声と、ピアノのダイナミックな響きが混ざり合い、劇的な色彩の変化を生み出す瞬間は鳥肌がたつほどです。
ピアノ奏者にとっても、非常にやりがいのある(そして技術を要する)大曲と言えます。
③ 繊細な和声(ハーモニー)の移り変わり
土田豊貴さんの編曲によるハーモニーは、とても繊細です。
不協和音から不協和音へ、そして美しい協和音へと解決していく過程は、中学生の心の葛藤と成長をとらえています。
フレーズの語尾の処理や、言葉の裏にある感情を音楽の流れにどう乗せるか、難しいところです。
【高等学校の部】AI×佐藤賢太郎が魅せる、魂のゴスペル『まだ旅の途中』
楽曲概要
- 作詞: AI
- 作曲: 岸田勇気、AI
- 合唱編曲: 佐藤賢太郎(Ken-P)
音楽的な特徴:圧倒的な熱量とシンフォニックな融合
高校生の課題曲は、まさに圧巻の一言ですね。
日本を代表するソウルシンガー・AIさんのルーツである「ゴスペル(聖歌隊)」の要素が色濃く反映された、魂を揺さぶる熱い楽曲です。
AIさん自身、高校時代にロサンゼルスの芸術高校で本格的なゴスペルクワイアーに所属していた経験があり、その情熱がこの曲の底流に流れています。
この熱い素材を、国内外の合唱界で絶大な人気を誇る作曲家・佐藤賢太郎(Ken-P)さんが合唱曲へアレンジしました。
ゴスペル特有のソウルフルなグルーヴと、クラシック合唱の持つシンフォニックで分厚いスケール感が見事に融合した、異次元の課題曲が誕生したのです。
ここが聴きどころ!
① ゴスペル特有の熱いグルーヴと、重なる「ありがとう」
この曲を歌う上で、クラシック的な「縦の線をきれいに揃える」だけの丁寧な歌唱は物足りなく聞こえてしまうかもしれません。重要なのは、身体の奥底から湧き出るようなリズム感(グルーヴ)と、フレーズの推進力です。
特に後半、歌詞にあるストレートな「ありがとう」という感謝のメッセージが、異なるパート間で幾重にも重なり合い、リフレインしながらダイナミックに膨らんでいく展開は圧巻です。
聴いているだけで胸が熱くなり、文字通り心臓が「どきん」と大きく跳ねるような感動を覚えます。
② 「迷えばいい、何度でも」という等身大の自己肯定
歌詞には「間違えたってそれもオーライ」「迷えばいい、何度でも」など、AIさんらしい等身大で力強いポジティブな言葉が並びます。
進路や将来に悩み、多感な時期を過ごす高校生たちにとって、これ以上ない応援歌となっています。
だからこそ、頭で考えて綺麗に澄んだ声を作るのではなく、時には地声に近い力強さや、胸に深く訴えかけるエモーショナルな声の響き(ソウル)をどれだけ引き出せるかがポイントになります。
③ パートごとの独立性と、圧倒的な音の壁
佐藤賢太郎さんのアレンジにより、ソプラノ・アルト・テノール・バス(混声の場合)の各パートが、それぞれ独立したエネルギーを持って動きます。
これらが合流した瞬間に生まれる「音の壁」のような圧倒的な声量と、スケールの大きなハーモニーは高校生ならでは。
各校がどのように個性を爆発させ、熱量をコントロールしてくるのか、今から夏のコンクールが待ちきれません。
3つの「どきん」が織りなす、2026年の夏に注目!
Nコン2026の課題曲を見ると、以下のような対比が見えてきます。
純粋な楽しさを追求する小学校、繊細でクラシカルな美しさを描く中学校、そして魂のエネルギーを爆発させる高校。
今年のテーマである「どきん」という心の動きが、全く違うアプローチで表現されています。
これから夏に向けて、全国の合唱部員たちがこれらの楽曲と深く向き合い、それぞれの「どきん」をどんな風に歌声に変えていくのでしょう。
楽譜の行間にある感情をどう読み解き、どんなステージを創り上げてくれるのか楽しみです。
2026年のNコンも、私たちの心を激しく揺さぶる、最高の大会になりそうですね。
ぜひ、みなさんもお気に入りの1曲を見つけて、応援してくださいね!


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