AI『まだ旅の途中』ゴスペルの魂を響かせる「歌い分けと表現」を高校生へ

混声三部・混声四部・女声三部それぞれの楽譜を手に、2026年のNコン(NHK全国学校音楽コンクール)に向けて熱い練習を重ねている高校生のみなさん、こんにちは!

第93回(2026年度)Nコン・高等学校の部の課題曲は、日本が世界に誇るアーティスト・AI(アイ)さんが書き下ろした『まだ旅の途中』です。

「上手く歌おうとしなくていい。魂をぶつけて、心を震わせてほしい」

今回のテーマである「どきん(心が揺れる瞬間)」にふさわしく、聴く人の胸を熱く焦がすような、圧倒的なエネルギーを持った楽曲が誕生しました。

しかし、いざ楽譜を開いてみると、「これまでの合唱曲とリズムのノリが全然違う…」「どうすればJ-POPやゴスペル特有のソウルフルな響きを合唱で表現できるの?」と、壁にぶつかっているチームも多いのではないでしょうか。

この記事では、作詞・作曲を手がけたAIさんの音楽的ルーツや楽曲の背景、そしてJ-POPやゴスペルのノウハウを合唱に落とし込むための具体的なテクニックを、徹底解説します。

全国大会を目指す強豪校のメンバーも、クラスマッチやコンクールに向けて一丸となりたいメンバーも、この記事を「作戦会議のテキスト(?)」として使い倒してください!

  1. アーティスト・AIの原点と『まだ旅の途中』誕生の背景
    1. AIさんの音楽的ルーツ:「聖歌隊(クワイアー)」
    2. 『まだ旅の途中』作曲・編曲のバックグラウンドは?超豪華な制作陣!
  2. テーマ「どきん」と『まだ旅の途中』の歌詞を深読み、そして高校生たちの「今」とは?
    1. タイトル『まだ旅の途中』に込められた意味
    2. 『まだ旅の途中』ポジティブとネガティブの「どきん」の対比
  3. 『まだ旅の途中』クラシック合唱から脱却!「ゴスペル・J-POP」の響きを作る3つのアプローチ
    1. アプローチ①:地声と裏声を融合させる「エッジとミックス」
    2. アプローチ②:2拍目・4拍目を感じる「バックビート・グルーヴ」
    3. アプローチ③:言葉の「アタック(子音)」でビートを刻む
  4. 『まだ旅の途中』混声・女声のパート別・アンサンブル攻略
    1. ソプラノ(Soprano):主旋律を「叫び」にしない気高さを
    2. アルト(Alto):内声のコード感を決定づけるテンションノート
    3.  テナー(Tenor):男声の魅力と推進力を生み出す
    4. ベース(Bass):クワイアー全体のグルーヴを支配する重低音
  5. 本番の審査で高評価を取る!魅せる演奏表現のコツ
    1. 呼びかけと応答(コール&レスポンス)と(ポリフォニー)の立体感
    2. 「静寂(サイレンス)」を味方につける
    3. 「一体感」という名のビジュアル表現
  6. 『まだ旅の途中』短期間での3ステップ集中練習プラン
    1. 【STEP 1】音取りと同時に「リズムの骨格」を叩き込む
    2.  【STEP 2】縦の線を揃え、テンションコードをチューニングする
    3.  【STEP 3】録音を聴き、感情の限界突破を目指す
  7. さいごに:高校生のみなさんへ

アーティスト・AIの原点と『まだ旅の途中』誕生の背景

この曲を深く表現するためには、まず作詞・作曲を務めたAIさんがどんなアーティストなのか、そしてこの曲にどのような想いを込めたのかを知る必要があります。

AIさんの音楽的ルーツ:「聖歌隊(クワイアー)」

『Story』や『ハピネス』『みんながみんな英雄』など、数々のヒット曲を世に送り出してきたAIさん。彼女の圧倒的な声量と、ソウルフルで温かい歌声のルーツはどこにあるか知っていますか?

AIさんはアメリカ・ロサンゼルスで生まれ、鹿児島で育ったバイリンガルですが、高校時代にロサンゼルスの名門アートスクールへ留学し、現地のゴスペルクワイアー(聖歌隊)で歌う喜びを知ったことが、プロの歌手としての第一歩でした。

「みんなで声を合わせ、ソウル(魂)を響かせる合唱」が、AIさんのアーティストとしての原点なのです。

今回の課題曲について、AIさんは「自分の原点でもある合唱の曲を作ることができて、本当に嬉しい」と語っています。

この曲には、AIさんが高校時代にクワイアー(聖歌やゴスペルなどの宗教曲を歌う合唱団のこと)の仲間たちと涙を流し、笑い合いながら歌った「あの頃の熱量」がそのまま集約されているのですね。

『まだ旅の途中』作曲・編曲のバックグラウンドは?超豪華な制作陣!

この『まだ旅の途中』は、AIさんだけでなく、現在の日本の音楽シーンおよび合唱界のトップクリエイターたちが結集して制作しました。

作曲:岸田勇気 氏 / AI 氏

J-POPのヒット曲を数多く手がける岸田氏とAIさんのタッグにより、合唱曲の枠に収まらない、ドラマティックなコード進行と、心に響くメロディラインが実現したのです。

合唱編曲:佐藤賢太郎(Ken-P) 氏

ハリウッドでの映画音楽制作や、世界中での合唱指揮で活躍する国際派作曲家です。
Nコンでは第83回(2016年)の中学校課題曲『結―ゆい―』の編曲でもお馴染みですね。

ゴスペルやJ-POPのファンキーなノリを、合唱の「美しいポリフォニー(多声構造)」へと完璧に昇華させています。

テーマ「どきん」と『まだ旅の途中』の歌詞を深読み、そして高校生たちの「今」とは?

第93回Nコンのテーマは「どきん」
心が大きく動く瞬間です。
小学校の部『どっきんせみさん』が日常の無邪気なときめきを描いているのに対し、高校生の部『まだ旅の途中』は、「未来への不安、葛藤、そしてそれを乗り越える強い意志」という、まさに10代後半の今しか味わえない、リアルで生々しい「どきん」を描いています。

タイトル『まだ旅の途中』に込められた意味

高校生活は、人生のゴールではありません。進路の選択、部活の引退、人間関係の悩み……。

「自分はこれで合っているのだろうか」「周りと比べて遅れているんじゃないか」と、焦りを感じる日が誰にでもあるはずです。

歌詞の中で繰り返される「まだ旅の途中」という言葉は、「完璧じゃなくていい。途中で立ち止まっても、悩んでもいいんだ。そのすべてが君の旅の財産になるから」という、圧倒的な肯定(こうてい)のメッセージです。

歌うときは、綺麗に仕上げられた「完成品」を見せるのではなく、泥臭く悩みながら進んでいる自分たちの「今」をそのまま声にすることが大切です。

『まだ旅の途中』ポジティブとネガティブの「どきん」の対比

歌詞の構成を見ると、前半では「迷い」や「孤独」といったネガティブな心の揺れ(どきん)が描かれ、後半にかけて「仲間の存在」や「自分の意志」に気づくことで、ポジティブな歓喜の揺れ(どきん)へと変化していきます。

合唱団全体で、「ここのフレーズはどっちの『どきん』だろう?」とディスカッションし、イメージをふくらませていくと、ストーリー性が一気に深まります。

『まだ旅の途中』クラシック合唱から脱却!「ゴスペル・J-POP」の響きを作る3つのアプローチ

合唱部で普段、古典的なア・カペラや宗教曲、クラシカルな日本合唱曲を歌っているチームほど、この曲の「ノリ」に苦戦するはずです。
なぜなら、求められる発声とリズムのアプローチが180度異なるからです。

AIさんのようなソウルフルな響きを作るための、3つの実践的アプローチを紹介します。

クラシック合唱とゴスペル合唱の違い

項目 クラシック的な合唱 『まだ旅の途中』(ゴスペル風)
発声の基本 頭声発声(裏声ベース)、均一な響き 地声のエネルギーを活かしたミックスボイス
リズムの重心 表拍(1・3拍目)を意識した縦の線の揃い 裏拍(2・4拍目)のグルーヴ、シンコペーション
言葉の処理 母音をまろやかに繋ぐ(レガート) 子音をアタックし、言葉をリズミカルに刻む

アプローチ①:地声と裏声を融合させる「エッジとミックス」

合唱の「綺麗な裏声(ピュアトーン)」だけでこの曲を歌うと、オシャレではあっても、AIさんの持つ「心の底から湧き上がる熱量」が消えてしまいます。

チェストボイス(地声)の解放

特に中低音域(アルト・テナー・ベース)は、胸にしっかりと響かせる地声が必要です。
怒鳴るのではなく、ため息を「あぁー」と深くつくときのような、太い息の支えで歌いましょう。

ソプラノのミックスボイス

ミックスボイス=地声と裏声が混ざり合った、高音でも力強く響くテクニック
高音域に行く際も、完全にクラシックのソプラノのトーンにするのではなく、少し口を横に開き、前歯の裏あたりに声を当てる「明るいミックスボイス」を意識してください。これにより、ポップス特有の「エモーショナルな鋭さ」が生まれます。

アプローチ②:2拍目・4拍目を感じる「バックビート・グルーヴ」

クラシック音楽は1拍目(頭)に重さがありますが、ゴスペルやJ-POPは2拍目・4拍目(バックビート)に強烈な重心があります。
グルーヴとは体が自然に動いてしまうノリやうねりを指します。

「ワン・ツー・スリー・フォー」の、スネアドラム(主にバックビートを叩く小太鼓)が鳴る位置で体が自然と跳ねるようなリズム感が必要です。

練習の方法は?
全員で歌うのを一度やめ、ピアノの伴奏に合わせて、2拍目と4拍目だけで手拍子(バックビート・クラップ=2拍目と4拍目に手拍子を入れる)をしながら歌詞をリズム読みしてみてください。
音が前に食い込む部分でリズムが転ばなくなったら、グルーヴが生まれています。

アプローチ③:言葉の「アタック(子音)」でビートを刻む

佐藤賢太郎氏の編曲は、言葉の割り振りが非常にリズミカルです。

母音(あいうえお)を伸ばすことばかりを意識すると、テンポが重くなって遅れてしまいます。「t」「k」「s」「p」といった子音をいつもより鋭く、前方に弾き出すように発音することで、声自体がパーカッション(打楽器)の役割を果たし、曲全体のドライブ感が跳ね上がります。

『まだ旅の途中』混声・女声のパート別・アンサンブル攻略

『まだ旅の途中』は、複数の編成(混声四部・混声三部・女声三部など)で出版されていますが、どの編成にも共通するアンサンブルの「急所」があります。

ソプラノ(Soprano):主旋律を「叫び」にしない気高さを

ソプラノは全編を通して、非常にエモーショナルで高音域のメロディを担当することが多いです。

サビなどで感情が高ぶると、ついつい声を張り上げて「叫び」や「悲鳴」のようになってしまいがちです。
どれだけ熱く歌っていても、喉の奥の空間(軟口蓋)はしっかりと高く保ち、豊かな息で言葉を転がすようにすると良いでしょう。
ソプラノが「太く、かつ澄んだ声」をキープできるかどうかが、全体の完成度を左右します。

アルト(Alto):内声のコード感を決定づけるテンションノート

テンションノート=和音(コード)の基本的な構成音(コードトーン)に、色彩感や緊張感(テンション)を与えるために付け足す音のことです。
この曲のオシャレな和音(テンションノートやセブンスコード)の肝を握っているのがアルトです。

ソプラノのメロディに対して、半音でぶつかるような絶妙なラインを歌うシーンが多々あります。自分のパートだけを聴いていると「あれ?音程が合っている?…」になるかもしれませんが、ソプラノや男声の響きとガチッと噛み合った瞬間に、「ゴスペル特有のドープな(最高にかっこいい)響き」が生まれます。

音高を曖昧にしないよう、自分の内声の役割に自信を持って歌いましょう。

 テナー(Tenor):男声の魅力と推進力を生み出す

混声編成において、テナーの役割は非常に大きいです。

特にポップス調の楽曲では、テナーが「甘く、かつ芯のあるハイトーン」でメロディを支えたり、オブリガート(対旋律)として動くことで、曲に圧倒的な推進力が生まれます。

クラシック的な「こもった声」になりすぎず、チェストボイス(胸に響かせる発生方法)のエネルギーを保ったまま、高い音へ滑らかにシフトするミックスの技術が必要です。

ベース(Bass):クワイアー全体のグルーヴを支配する重低音

グルーヴ=音楽や演奏において生まれる「ノリ」や「リズムのうねり」のことです。
ベースは、『まだ旅の途中』の「エンジン」です。

ピアノの左手のベースライン、あるいはドラムのキック(バスドラ)と完全に一体化するつもりで、1拍の長さを正確にキープしてください。
音が短くブツブツ切れてしまうとグルーヴが死んでしまうため、深いレガートを保ちつつも、ビートの「点」をしっかり提示するような、引き締まった低音を目指しましょう。

本番の審査で高評価を取る!魅せる演奏表現のコツ

コンクール(Nコン)のステージにおいて、全国の審査員が「A判定」を出すポイントは、技術の先にある「表現の説得力」です。

呼びかけと応答(コール&レスポンス)と(ポリフォニー)の立体感

この曲では、あるパートが投げかけた言葉に対して、別のパートが追いかけて歌うような「コール&レスポンス」や「エコー」の構造が多用されています。

これがただの「音のズレ」に聴こえてしまうのは最悪です。

「いま、誰が一番重要な言葉を発しているのか」を全員が完全に把握し、主役のパートにスポットライトを当て、他のパートは一歩引いて背景になる、という音量のダイナミクスコントロールを徹底してください。
アンサンブルの中に「主役と脇役」の立体感が生まれると、一気にプロっぽい演奏になります。

「静寂(サイレンス)」を味方につける

ゴスペルの熱い盛り上がりの直後に、ふっとすべての音が消える瞬間や、ピアノ伴奏だけになる瞬間があります。

「音楽は、音が鳴っていない瞬間(休符)に最も雄弁になる」と言われます。
全員の息がピタッと止まる瞬間(ブレスの瞬間)の緊張感が高ければ高いほど、次に爆発するサビのエネルギーが何倍にも膨れ上がります。
音を消すタイミング(語尾の処理)を、1ミリの狂いもなく揃える練習を重ねてください。

「一体感」という名のビジュアル表現

AIさんのクワイアー(聖歌隊)をイメージしてみてください。全員が直立不動で、無表情で歌っている姿は想像できないはずです。

もちろん、コンクールなので過度な演出や動きは制限されるかもしれませんが、「全員の呼吸のタイミングが揃うことで、自然と体が同じリズムでわずかに揺れる」「歌詞のエモーションに合わせて、全員の目線や表情がシンクロする」といった一体感は、視覚的な説得力として審査員に強烈にアピールします。

冷めた演奏は高校生の部では通用しません。全員が音楽に「没入(没頭)」している状態をステージ上で作り上げましょう。

『まだ旅の途中』短期間での3ステップ集中練習プラン

限られた部活動の時間の中で、この難曲を本番クオリティまで引き上げるための、効率的な3ステップ・プランです。

【STEP 1】グルーヴの身体化 ──> 【STEP 2】和声の「濁り」の解消 ──> 【STEP 3】魂の音楽(本番リハ)

【STEP 1】音取りと同時に「リズムの骨格」を叩き込む

最初から音符を追って歌うのではなく、まずは手拍子や膝たたきで「バックビート(2・4拍目)」を叩きながら、歌詞をメトロノームに合わせて1つの音(ドの音など)で喋る練習をします。

リズムの「ゲシュタルト(枠組み)」が体に入る前に音取りをしてしまうと、クラシック的なベタッとしたダサいノリが歌癖(うたぐせ)としてついてしまい、後から修正するのが非常に困難になります。まず「ノリ」を揃えることから始めましょう。

 【STEP 2】縦の線を揃え、テンションコードをチューニングする

リズムが合ってきたら、今度はテンポを少し落として、パート間の「和音(ハーモニー)」を丁寧に作っていきます。

特にアルトやテナーが持つ「複雑な構成音」が、ソプラノのメロディに対してどう響いているか、ピアノでその和音だけをドーンと鳴らして、その響きの中に自分の声を「溶け込ませる」感覚を養ってください。ブレスの場所を楽譜に完全に統一して書き込み、全員のタイミングを合わせるのもこの時期です。

 【STEP 3】録音を聴き、感情の限界突破を目指す

最後の仕上げは、客観的なフィードバックと感情の爆発です。

ステージの並び順で通し演奏をし、必ずスマホなどで録音・録画します。ポップス調の曲は、自分たちが「めちゃくちゃ熱く歌えている!」と思っていても、録音を聴いてみると「意外と平坦で普通に聴こえる」という罠があります。

ダイナミクスの高低差、言葉のキレ、そして何よりも「魂が伝わってくるか」をメンバー全員で厳しく、かつ愛を持って批評し合い、本番へのエネルギーを高めていきましょう。

さいごに:高校生のみなさんへ

AIさんの『まだ旅の途中』は、これまでのNコン課題曲の歴史の中でも、「個人のパッション」と「チームのグルーヴ」が試される、やりがいのある名曲です。

練習の途中、なかなかハモらなかったり、リズムが揃わなくてイライラしたりすることもあるかもしれません。でも、それこそがまさに「まだ旅の途中」のリアルな姿です。

完璧な合唱を目指す必要はありません。
不器用でも、今のみんなの葛藤や、仲間と一緒に音楽ができる喜び、そのすべての熱量をステージ上で伝えることができた時、聴いている人たちの心(どきん)を震わせる、唯一無二のハーモニーが響き渡ります。

最高の仲間と共に、この素晴らしい「音楽の旅」を全力で駆け抜けてください。
全国のステージで、みんなのパッションが爆発する瞬間を心から楽しみにしています!応援しています!

 

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