「鱒」ってどんな曲だと思いますか?
魚の鱒を題材にした曲?
なぜ有名なの?
聴いたことがないけど楽しめる?
いろいろ疑問がわいてきますよね。
この曲は美しさの中に、思いがけない物語がかくれている音楽なのです。
どんな物語なのでしょう?
そして歌曲と同じ名前のピアノ五重奏曲があります。
ピアノ五重奏曲ってどんな曲かな?
この記事では、フランツ・ペーター・シューベルトの歌曲「鱒」とピアノ五重奏曲「鱒」について、意味・あらすじ・聴きどころをわかりやすく解説します。
ぜひ、最後まで読んでくださいね。
シューベルトの歌曲「鱒」あらすじと意味
歌曲「鱒」は1817年、シューベルト20歳のときに作曲されました。
友人のシューバルト(紛らわしいのですが、シューベルトではありません)の詩につけた音楽です。
詩のあらすじは
明るく澄んだ川でぴちぴちと身を翻しながら泳いでいる鱒を、私は気持ちよく眺めていた。
そこへ釣り人がやってきて、鱒を仕留めようと冷たい目でじっと見ている。
川の水は澄み切っているのだから、鱒は釣り人に仕留められることはないだろう。
ところがしびれを切らしたずる賢い釣り人は、川をかき混ぜ濁らせてしまった。
考えるひまもなく釣り人の竿の先で「鱒」が暴れていた。
私は腹を立てながら、罠にはまった「鱒」をみつめた。
この詩の最後の一節には「若いお嬢さんは気をつけなさい。男はこんな風にしてたぶらかすのだから」という意味があります。
「鱒」は純粋さを、釣り人は「策略、誘惑」を表していると考えられます。
つまり「鱒」は「無垢なものがだまされてしまう」世界を描いた、寓話とも読み取れるのです。
シューベルトの「鱒」は四節からなる詩の、最後のこの一節は4番として入れていませんが、この詩の言わんとしていることを、充分に伝えているのではないでしょうか?
シューベルト歌曲「鱒」の聴きどころは?
初めて聴く人はつぎの3点に注目して聴いてみてください。
◆ピアノの流れるような動き=川の流れ、水のきらめきを表している。
◆軽やかなリズム=鱒が生き生きとすばやく泳ぐさま
◆途中にでてくる激しさ、違和感=物語の重大な変わり目
澄み切った川の流れをあらわす美しいピアノの調べにのって、明るくきびきびとした歌が始まります。
しかし悦びもつかの間、一瞬にして暗い音とともに、怒りを含んだメローディが・・・。
はじまりとは対照的な暗い流れとなって、ディミヌエンド(だんだん小さく)で寂しくおわります。
詩の意味とともに聴くと音楽が立体的に聴こえ、より深く感じ取ることができるかもしれません。
つぎにシューベルトのピアノ五重奏曲「鱒」について解説していきますね。
ピアノ五重奏曲ってどんな音楽?
名前の通り5人で演奏する室内楽というジャンルの音楽です。
ピアノに弦楽器が加わって、小さなオーケストラのような豊かな響きを生み出します。
通常はピアノと、弦楽器4本(ヴァイオリン2本、ヴィオラ、チェロ)の組み合わせですが、管楽器とピアノの組み合わせもあります。
シューベルトの「鱒」ではとくべつな組み合わせで、ヴァイオリンを1本にして、低音部にコントラバスを加えています。
「鱒」ではコントラバスの低く温かい響きが、音楽にやわらかい奥行きを生み出し、包み込まれるような心地よさを感じさせます。
シューベルトのピアノ五重奏曲「鱒」はなぜ鱒という名前なの?
ピアノ五重奏曲「鱒」は5つの楽章があり、そのうちの第4楽章に歌曲「鱒」のメローディが登場するので「鱒」という名前がついています。
ただし、歌曲のメロディーがそのまま出てくるのではなく「変奏曲」というスタイルで書かれています。
「変奏曲」とはテーマ(この場合「鱒」のメロディー)をリズムやメロディー、和声をさまざまに変化させていく形で書かれた曲です。
ある時は軽やかに、ある時は落ちついた雰囲気にと表情が変わる面白さがあります。
シューベルトの歌曲「鱒」を聴いたことのある人は、ピアノ五重奏曲「鱒」の第4楽章を聴くと「あゝあの曲だ」とちょっと嬉しくなるかもしれませんね。
シューベルトピアノ五重奏曲「鱒」のエピソードと音楽
ピアノ五重奏曲「鱒」は1819年、シューベルトがまだ20代前半の頃に書かれた曲です。
シューベルトはある音楽好きで裕福な人物から、「歌曲≪鱒≫のメロディーを使って室内楽を書いてほしい」と依頼をされました。
この人は自分でもチェロを弾き、友人たちと室内楽を楽しんでいたそうです。
シューベルトは、依頼人のサロンの小さな空間で演奏されるにふさわしい、明るく親しみやすさに満ちた音楽を書きました。
歌曲「鱒」がどこか意味深なところがあるのに対して、ピアノ五重奏曲の「鱒」はきらめく光の中で歌うような楽しさにあふれています。
ピアノパートがクリアな響きで美しく生き生きと歌い、それを弦楽器の柔らかな響きが受けとめて、広がりを感じさせます。
第4楽章の「鱒」のテーマによる変奏曲は少し緊迫感のある部分もありますが、すぐまた明るい調子となり、演奏する人たちも楽しそうです。室内楽の醍醐味を感じさせられます。
シューベルトの歌曲「鱒」とピアノ五重奏曲の「鱒」との違いと共通点は?
おなじ「鱒」なのに全く違う?
この二つの曲は同じ「鱒」という名前を持ちながら、かなり印象が違います。
歌曲「鱒」は詩に寄りそった音楽です。
美しい風景にもかかわらず、そこには「策略」があり、そしてその策略に「だまされる」といったほろ苦い意味がこめられていました。
一方、ピアノ五重奏曲の「鱒」はもっと明るく、開放的な音楽です。
シューベルトの天性の明るさと優しさが、聴く人を包み込んでくれます。
一つの旋律から、ここまで明と暗という対象的な場面を描き出せるのは凄いですね。
共通しているのは?
共通しているのは「流れるような曲調と美しさ」です。
歌曲「鱒」ではピアノが水のきらめきと流れを表現し、ピアノ五重奏曲ではその流れを受けついで、楽器同士が語り合っているように聴こえます。
ピアノのきらめきと、弦楽器の温かい響きとが一体となって、聴く人によろこびを伝えてくれます。
シューベルトの「鱒」初めて聴く人におススメの順番は?
初めて聴く人にはこんな順番がおススメです。
①歌曲「鱒」を聴く
②ピアノ五重奏曲「鱒」の第4楽章を聴く
④ピアノ五重奏曲「鱒」を初めから聴く
もちろん2番目にピアノ五重奏曲を初めから聴くのでもよいでしょう。
ただ、長い曲なので第4楽章の「鱒」のメロディーに辿り着くのに、時間がかかるのが難点かもしれません。
「クラシック音楽」というと理解しなければいけないんじゃない?と思うかもしれませんが、「鱒」は歌曲もピアノ五重奏曲も気軽に楽しめる音楽です。
澄んだ川の流れを想像しながら、音の動きをそのまま感じてみて下さい。
それだけでこの音楽の魅力を充分に感じ取れると思います。
「歌曲」と「ピアノ五重奏曲」両方聴くことで、音楽の聴こえ方が深まるでしょう。
ぜひ、YouTubeなどで聴いてみて下さいね。

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