ショパン「英雄ポロネーズ」作品53変イ長調とはどんな曲?

前回のブログでは、可愛らしい「子犬のワルツ」についてお話しました。
今回は、一転して聴く人の心を震わせるような勇壮な一曲、ショパンの「英雄ポロネーズ(ポロネーズ第6番 変イ長調 作品53)」を紹介します。

「ピアノの詩人」と呼ばれるショパンを病弱で弱々しいと思う人もいるようですが、決してそんなことはありません。
繊細で、少し神経質なところがあるかもしれませんが、故郷ポーランドへの燃えるような愛と、困難に立ち向かう「不屈の精神」のもちぬしでした。

なぜこのポロネーズは「英雄」と呼ばれるのでしょうか?
そして、あのTorioで繰り返される地響きのような低音にはどんな意味があるのでしょう?
クラシック初心者の人にもそのミステリアスな魅力について、分かりやすく解説していきます。

ぜひ最後まで読んでくださいね。

 「英雄」ポロネーズとはショパンが付けた名前ではない?

実は、この曲も「子犬のワルツ」と同じように、ショパン自身が「英雄」と名付けたのではありません。

ショパンの「英雄ポロネーズ」は時代が求めた「英雄」の姿

ショパンの故国ポーランドは1772年から3回にわたってロシア、プロイセン、オーストリアの三大国に分割され、地図から消えかかっているような苦境の時代がありました。

この曲が発表されたのは1842年、当時のヨーロッパは激動の時代です。
特にポーランドはロシアの支配下にあり、独立のための民族蜂起( 他国から支配されず、自国の政府を持つことを目指す闘い)が繰り返されていたのです。

そういった中で、この曲の雄大な美しさと、男性的で活気にみちたメロディを聴いた人々が、「これこそ英雄の姿だ!」と熱狂し、いつしか「英雄ポロネーズ」と呼ばれるようになったのでしょう。

ショパンの恋人ジョルジュ・サンドも、この曲を聴いて「力強く、輝かしい!」と絶賛し、ショパンの中に眠る「不屈の精神」に感嘆したそうです。

「ポロネーズ」って何のこと?

タイトルにある「ポロネーズ」という言葉は聞き馴れないかもしれませんが、これはショパンのルーツを知る上でとても大切なキーワードです。

ポロネーズは貴族の踊り、ポーランドの誇り

ポロネーズとは、もともとポーランドの貴族たちが冠婚葬祭などの儀式で踊っていた「歩くためのダンス(舞曲)」または行進曲のことなのです。
堂々と胸を張って歩くような独特のリズムに特徴があります。
ショパンは幼い頃からこのリズムを体で感じ、生涯を通して「ポーランドの誇り」を、この音楽で表現し続けたのです。

「英雄ポロネーズ」は、そのポロネーズの特徴が最高のかたちで、表現されたものと言っても良いでしょう。
冒頭の16小節の序奏で、半音階的に上がっていく和音の力強い動きの後、3つの和音を経て下降する音型がつづく形は、威厳にみちたポロネーズを予感させるものです。

ショパン「英雄ポロネーズ」初めの主題が明るく魅力的!

冒頭の後に続く主題は付点音符が、踊るような表情で明るく生き生きとした音楽を奏でます。
3連符が入ったり、リズムの変化が面白いのですが、ショパン特有の歌うようなメロディーも同時に聴こえるところが、魅力です。
浮き立つような気分にしてくれます。
ショパンは子供の頃、冗談好きでユーモラスなところがあったそうですが、そんな一面が感じられます。

ショパン「英雄ポロネーズ」トリオ(Trio)部の地響きのような左手の正体は?

この曲を聴いていて、多くの人が「すごい!」と圧倒されるのが、中間部で登場する左手の連続音です。

迫りくる軍隊の足音

低音部に「ド・シ・ラ・ソ……」と16分音符がオクターブで執拗に繰り返される部分です。
ピアニストにとっては筋肉が悲鳴をあげるほどの超難所ですが、ここにはある情景を思いうかべることがあります。

それは、「遠くから押し寄せてくる騎兵隊の足音」
ショパンの頭の中には、かつてポーランドを救った伝説の英雄たちが、馬に乗って駆けつけてくる姿が見えていたのかもしれませんね。
最初は小さく、次第に地響きのように大きくなっていくその音は、聴いている私たちもドキドキと心臓が早鐘を打つようです。
そして右手は勇壮なメロディーを奏で、聴いているとつい手に力が入ってしまいます。

ショパン「英雄ポロネーズ」後半の美しさ

Torioの勇壮な曲調から抜け出すように、マズルカ的な静かで優しく美しい旋律を、転調やリズムの変化で聴かせます。
英雄ポロネーズの激しさから一転して、涙が出るような美しいメロディーに驚かされます。
激しさから解放されて、ホッとして慰められるような気がします。

ここを通り過ぎると再び初めの勇壮なポロネーズの主題が、堂々とした風格でこの曲を締めくくるのです。

ショパン、病と闘いながら生み出した「生命力」

これほどまでに力強い曲を書いていたショパンは当時、結核が悪化して体調がすぐれない状態でした。

ショパン身体の限界を超えた創作

1842年ショパンが英雄ポロネーズを作曲した当時、ショパンの身体は結核で衰弱していました。
しかし、この時期のショパンは創作活動の絶頂期でした。
肉体的な弱さを跳ね除けるように、ショパンの精神はより高く、より強く燃え上がっていったのです。

「英雄ポロネーズ」のきらびやかな和音や、大地を揺らすような力強さは、「死に抗う、生命の輝き」だったのかもしれません。

ショパン「英雄ポロネーズ」 初心者のための「楽しみ方」3つのポイント

「英雄ポロネーズ」を聴くとき、以下のポイントを意識すると、曲の世界観をより深く味わえるでしょう。

① 冒頭の「ファンファーレ」  曲が始まった瞬間、まるで幕が開くような期待感に溢れて
います。ここから英雄の物語が始まるワクワク感を楽しんでください。

② 左手の「馬の足音」 曲の中頃のTorioに入ると、低音部に同じ音が続くところが出て
きます。ピアニストの左手の動きを動画などで見てみてください。「そんなに速く
動くの?!」と驚くことでしょう。

③ 壮大な「エンディング」  曲の最後、全てのエネルギーを出し切るような力強く、華やかなエンディングです。
聴き終わった後、不思議と前向きな気持ちになるのではないでしょうか。

ショパン「英雄ポロネーズ」あなたの心の中の「英雄」を呼び覚ます?

ショパンの『英雄ポロネーズ』は、ただ「派手な曲」というのではありません。
それは、どんなに辛い状況にあっても、自分の誇りを捨てず、前を向いて歩き続けようとする人間の強さを教えてくれる音楽です。

勉強につかれたとき、悩み事で落ち込んた時にはぜひ、この曲を聴いてみてください。
ショパンがピアノに込めた「不屈のエネルギー」が、あなたの元気を取り戻してくれるかもしれませんよ。

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